オヤジ45才、再出発のブログ。

45才のポンコツ映像ディレクターがこれまでのダメダメ人生をさらけ出して、再出発を目指すブログ

45オヤジ、京都を想う。

暑い。。。数歩歩くだけで汗が滲み出る。

この時期になると、いつも5,6年前の京都での事を思い出す。
 
当時調子に乗っていた私に翳りが見え始めていた頃、それでもその先があるはずと、東京を離れ、太陽の照りつける蒸し暑い京都まで行き、カメラを片手に撮影現場を駆け回っていた。質のいいドキュメンタリーを撮りたい、そう心に誓って。
しかし、、、つまらない事件が起こる。某役者の撮ってはならないシーンというのを撮ったと、あるプロデューサーに因縁をつけられ、現場で全てのスタッフの前で意味不明に怒鳴られたのだ。あの時の事はずっと忘れない。。。忘れたくても忘れられないのだ。。。自身の芯が弱い証拠なのかもしれない。。
 
こちらの言い分も聞かず、闇雲にキ◯ガイのように怒るプロデューサーに目の前が真っ暗になった。本当に真っ暗になるというのを体現した感じだった。目眩を感じ、脚の力が抜け、心臓は高鳴り、嘔吐を催し、ああ、全てが終わったという感じさえあった。あたりには騒めく蝉の声だけがやけに大きく聞こえた、一緒に行ってもらっていた後輩の前で惨めに呆然と立ち尽くす私がいた。。。
 
その現場は始めの打ち合わせから上手く回っておらず、私自身が現場にとって厄介な存在となっていた。本当は私のポジションを使いやすい人間に変えたいと思っていた現場の製作陣は、クライアントから直で仕事を降ろして貰っている私が気に入らなかったのだ。ずっと貯めていた怒りを噴き出した感じだった。
 
今、これを書きながらも当時の事を思うと腹が立ち、苛立ち、そして、、情けなくなる。
 
怒鳴られた時、私に仕事をくれたクライアントもおらず、私をフォローする人間は一人もいなかった。現場が終わり、夜もスタッフルームに呼ばれ、どうなってるの?といつまでもしつこく怒られ続けた。クライアントが撮って欲しいと言った仕事にも関わらず、だ。「撮っただけで公表しなきゃいいじゃない。どうせチェック受けるんだし」そんな風に大きく構えてくれる人間はその場には誰一人いなかった。ひたすら体を小さくして、すみませんでした悪いのは私です、と言い続けた。現場の雰囲気を悪くするものは、虫の一匹でも許さん、そんな感じだった。その夜、一旦東京まで戻らねばならなかった私は京都駅まで重い足を引きずり、最終の新幹線で暗闇の街をぼーっと眺めながら東京へ向かった事を忘れない。
 
 
しかし、私はずっと納得がいっていなかった。なぜあれほど怒られねばならなかったのか?私がカメラを構えるのは、仕事だ。構えていれば、あらぬものを撮ってしまうのも、当たり前だ。そういう状況にルールもなく私が回すカメラを入れているのは製作陣だ。そして、そんな私に現場に入ってと言ったのはクライアントだ。事が起きた時、そのクライアントに電話をしてその事件について掛け合って欲しい、と一日中電話をしたが、電話にすら出ようとしなかった。
「やられた、俺一人に全部背負わそうとしている。。」そんな風な考えが頭から離れなかった。考えに考え私が出した回答は、その仕事は私という存在がいてもなくてもいい仕事、良いものだったら上手く利用しよう、そんな仕事だったのだ。
 
 
今思えば、これは私の仕事のやり方に問題があったようにも思える。私はいつからか、仕事に保険をかけるようになっていた。あの上司がOKと言ったからOKなんですよね、プロデューサーがOKと言ったからOKなんです。そんな風に上にお伺いを立て、だから大丈夫、保険をかけたから大丈夫。そんな仕事をしていた。
 
こういう仕事の方法、普通は当たり前なのかもしれない。
でも、そうか?本当にそうなのか?
 
決定権が無い。それは責任が無い事という事。常にお伺いを立てねばならない責任のない仕事。
本当に仕事ってそんなものなのか??
 
そして、OKと言ったからいいはず、という甘えもそこにはあった。仕事は日々変わり、会う人間も日々変わっていくという中で、前の仕事が上手く行ったからと、同じようにできるはずだと考えてしまった向上心の無さ。
 
クライアントが口ばかりの人間だった事をまったく知らずに仕事を始めてしまった凡ミス。人を見る目の無さはその後しっぺ返しとなり、切なさ、哀しみを容赦なく叩きつける。
 
そこから、半年、私は奈落の底に落ちたような日々が続いた。後で妻があの時はよくウツにならなかったね、といったぐらいボロボロだった。いや、多分軽い鬱だった。その後、だんだん全てが嫌になって、死、というものを意識したくらいだから。。
 
 
でもね。
 
私は今、こうして頑張れてる。新しい世界に行こうと。
かわいい娘と愛する妻を必ず幸せにするのだと、頑張れてる。
それもあのロクでもない製作陣のおかげだ。
 
人生は山あり谷あり。
調子のいい事は続かない。そのかわり、悪い事だって続かない。
必ず道は開ける。
 
私がここ数年で学んだ一番大切な事だ。